地唄「ゆき」

雪という本来、音を持たないはずのものを女心と共に、切々と表現したこの曲は、地唄の代表曲としてあまりにも有名です。
特に「 心の遠き夜半の鐘・・・」の後の合いの手は≪ 雪の合い手 ≫と呼ばれ、歌舞伎の下座音楽をはじめ、邦楽のさまざまな曲に使われています。
大阪南地の芸妓・ソセキが、出家した後に、かつて、来ぬ人を待ち焦がれ、雪の夜を独り寝に過ごしたわが身を回想し、
かすかな煩悩を捨てかねて、懊悩した心情を切なく詠っています。

谷崎潤一郎の『細雪』の中で、主人公 妙子が、山村流の『 ゆき 』を舞う姿が描かれていますが、
山村流では、師範試験の課題曲の一つでもあり、大切に舞われています。